2023年6月30日
高齢者事業スタッフのSです。
以前、余命わずかな方の自宅売却を請け負った時のお話です。
ケアマネジャーよりおひとりさま男性の自宅売却についてご相談を頂き、まずはご自宅を見に行きました。
奥様は数年前に他界され、ご主人お一人でお住まいでしたが、現在は入院中のため、遠方から駆けつけた姪御さんに立ち会っていただき、ご自宅を拝見しました。
家の中はまるでゴミ屋敷のようで、物やゴミが散乱し、あちらこちらに監視カメラや防犯ブザーが置かれるなど、非常に奇妙な雰囲気でした。
後に分かったことですが、奥様が亡くなられてから警戒心が強くなり、近所の方とも揉め事が絶えなかったそうです。
ゴミの量もその頃から増えていき、一緒に立ち会った姪御さんも、奥様がいらっしゃった数年前とは全く異なるその様子にとても驚かれていました。
実はこの姪御さんは奥様方の姪にあたり、ご主人には子も兄弟もおらず、ご両親はすでに亡くなられているため、法定相続人がいませんでした。
そのため、ご本人が財産の相続先を姪御さんに指定しないと姪御さんは何も相続することができません。
このままでは、姪御さんが立て替えて支払った入院費などの全ての費用が戻ってこないことになり、姪御さんにとってもご本人にとっても、今後の支援にかかわる重大な局面にありました。
この問題を解決するには、まずご自宅の売却が不可欠です。
後日、病院で司法書士の先生に立ち会っていただき、自宅売却のための手続きを行おうとしたのですが、ご主人の容態が良くなく、関係者皆で必死の呼びかけを行うことになりました。
ご主人は、意識はあるものの、呼吸器を付けており、わずかに弱い反応しかできません。
姪御さんの呼びかけに答えようにも反応が弱く、困り果てていた時に、看護師長が病室に入ってきました。
おそらく40代であろうその小柄な女性看護師長が、ニコニコしながらご主人の枕元に立つと、その姿に似つかわしくない低く野太い男性のような声色を使い、病室に響き渡る大きな音量で話しかけました。
看護師長も、このままでは姪御さんにすべての負担がかかり、この先支援していくのが困難になると分かっており、ご本人のためにも必死に呼びかけてくれたのでした。
十数分後、紆余曲折ありましたが、何とか無事に手続きを完了することができました。
後に看護師長にお聞きしたところ、男性のような低い声が患者さんに伝わりやすい事など色々と教えてくださいました。
看護師長始め、関係者の皆さまが、ご本人やご家族の状況をよく理解してくださり、病院一体となってサポートしていただけたことにとても感動しました。
高齢のおひとりさまで「財産を相続させたい人がいる」「お世話してくれる人に遺贈したい」という方はきちんとした手続きが必要です。
今回のご主人もその後、公正証書遺言を作成して、姪御さんに財産を残せるよう手続きを行いました。まずはお気軽にご相談ください。